ハイドンのチェロ協奏曲第2番

もういつだったか忘れてしまいましたが、CDショップに行ったとき、店頭に安いCDが置いてありました。ちょっと見てみるとジャクリーヌ・デュプレが弾く表題の曲を目にしました。この人の名はどこかで聞いたことがあるので何気なしに買いましたが、例によって一度もプレーヤーに掛けずに数年経ちました。たまたま音楽雑誌かなんかでこのデュプレのことが書いてあり、そんなに素晴らしい演奏家だったんだ、と知りました。「だったんだ」というのは彼女が早世したからです。 それで、以前CDを買ったことを思い出し、初めてこの曲を聴いてみました。
 ハイドンの音楽は、穏やか、中庸と言われますが、私は、まあ、格調はあるが退屈な作品が多いという印象でした。しかしこの曲、聴いてみると素晴らしいの一言に尽きます。ハイドン特有の格調、品位は勿論のこと、朝日が輝かしく昇っていくような爽やかで清々しい、何と気持ちの良い曲なんだろう、またデュプレの演奏も素晴らしい、カデンツアなんか凄い勢いで弾いているんですね。しばらく毎日これを聴いていました。朝、仕事を始める前に聴くのが最高です。
 何年か経ち、別のチェリストの演奏を聴いてみたくなりました。パソコンで調べて、早速購入しました。これ2CDです。ハイドンのバイオリン協奏曲とチェロ協奏曲がセットになっています。バイオリンは、サルバトーレ・アッカルドで、チェロは、クリスティーヌ・ワレフスカという私が知らない演奏家です。なぜこれを選んだか?アッカルドは、以前パガニーニの作品を聴きたくてこの人のものを買ったことがあり,超絶技巧で有名です。まあおかしな買い方をしたんですね。しかし、正解でした。この、ワレフスカの演奏、(私の印象では)デュプレを上回る名演そのものなんですね。
 こういうことを言うと、チェロのファンに叱られるかもしれませんが、私はチェロという楽器が実はあまり好きではありません。図体が大きいのに(こういう言い方は良くありませんね)あまり大きい音が出ないからです。また音色も、バイオリンのように輝かしい音色ではなく、何かくすんだような、深く沈んだ音色なんですね。
 しかし、です。ワレフスカの演奏、音量も十分、迫真の演奏です。カデンッアなんか弦が切れてしまうのでは、と思うくらいの迫力です。これもしばらく、毎日聴いていました。あまりにも気に入ったので、ワレフスカの5枚組のセットを買ってしまったほどです。ハイドンのこの曲、長い間、偽作説がありました。ハイドンにしては異色、ということなんでしょうか?
 最近、私的な感情移入を感じる曲より、このように端正で、私情を感じない曲の方が耳に心地よいのは年齢から来るものでしょうか。いずれにしても、この曲私が知らなかっただけで、素晴らしいです。